年4回の面談と豊富な研修 生産性がアップし処遇も改善

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

年4回、上司と面談する場を設けているほか、独自の教育システムによってきめ細かな研修を実施し、従業員のキャリアプランの実現を後押ししています。結果、全社が活性化し、生産性が向上。従業員の処遇改善にもつながっています。

面談を通して働き方を柔軟に変更

　環境対応車用のリチウムイオン電池部品を主力とする金属製品の加工メーカー。従業員数は600人を超え、県北部では最大級の雇用規模を誇ります。「地域のリーディングカンパニーでありたいと常に思っています。ワーク・ライフ・バランスに注力することも、その姿勢を示す一つの方法です」と話すのは、藤井啓代表取締役社長です。
　同社では、ワーク・ライフ・バランスの取組について、単に業務負担を軽減して私生活の時間を増やすことではないと捉えています。「ワークとライフの両方が充実することで理想的なキャリアを積むことができる」との考えの下、7年前にキャリアコンサルティング制度を導入しました。四半期ごとに上司が面談し、従業員のライフイベントを共有することで、より良い働き方を一緒に模索。面談と聞くと、一般的に目標達成のためだけと思われがちですが、多様化する従業員一人一人のキャリア形成を実現することを目的に行っています。
2015年に入社した総務人事課の岩瀬美奈さんもライフイベントによって働き方を変えた一人です。入社当初は子どもが受験を控えていたため、私生活に重きを置いて準社員として働いていました。その後、子育てが落ち着いた2021年春、部署を変えて正社員になりました。「自分でも成長を感じられ、自信につながっています」と胸を張る岩瀬さん。エンジニアで活躍した後に営業部に配置転換した人もいます。
　制度導入を機に、自身のライフプランを伝えられる環境や風土が醸成され、勤務時間や業務内容など働き方を変更した事例は、直近の3年間で99件に上ります。また、2019年度の新卒3年以内の離職率は18％となり、キャリアコンサルティング制度導入前と比べて9ポイント減りました。

細やかな研修で目標を見える化

人事制度の改善だけでは従業員の自己実現は達成されません。そこで、5年ほど前に独自の教育システム「ガネーシャ」を開発しました。係長研修や全社共通の一般的な教育に加え、語学など部署をまたぐ業務に必要なスキルを身に付ける「役割別教育」、部署ごとの専門性を高める「部門別教育」など、きめ細かな研修の機会を設け、各自の理想とするキャリアプラン実現までの道筋を見える化。「毎日どこかで研修を実施している状況です」と経理管理部長の平尾大輔さんは話します。
　面談を通じて個々の強みや弱点を見つけた上で、必要な時に必要な教育を受け、キャリアアップを図る従業員たち。結果、会社全体が活性化し、生産性も向上しました。ガネーシャ導入前と比べると、月当たりの平均残業時間は25％削減された一方で、賞与支給額は約1.8倍に増えています。

工場の自動化で女性活躍を推進

藤井社長は「最近は『どうしたら給料が上がりますか』と聞いてくる従業員はいなくなりました」と笑顔を見せます。従業員が目標をはっきりと把握し、何をすればいいか理解できているからだといいます。
　ほかにも地域の協賛店で割引を受けられたり、スポーツジムを無償で利用できたりする制度を整え、従業員の私生活の充実にも力を入れています。
　以前は製造業界特有の3K（きつい、汚い、危険）への対応が足りず、女性の活躍の場が少なかった同社。業務の標準化や工場の自動化などに取り組み、今では女性従業員の割合は4割を超えました。「男性が多かった技術職や営業職でも女性が活躍しています。これからも性別に関係なく長く安心して働くことができる職場づくりを進めます」と藤井社長。女性の管理職がいないという目下の課題が解消される日も遠くはなさそうです。