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姫路地域セミナー in 2015 女性が活躍できる職場づくりについて考える

フェスタ終了センター主催事業 投稿日2015.11.25

開催要項

開催日・場所

平成27年11月25日・姫路労働会館

事例報告

事例1 大植 光展 氏 (富士通周辺機㈱事業支援統括部 担当部長)
事例2 吉川 敏子 氏 (神姫バス㈱企画部子育て支援推進課長)
事例3 菅井 雄一 氏 (㈱日本政策金融公庫姫路支店長)

意見交換・とりまとめ

コーディネーター・講演

三崎 秀央 氏 (兵庫県立大学経営学部 教授)

 

11月25日、企業経営者や人事労務担当者などを対象に「ワーク・ライフ・バランス 姫路地域セミナー」が姫路労働会館で開催されました。女性が活躍できる職場を整えるために何が必要か。女性が働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいる先進企業3社の事例報告を基にポイントを探りました。

ワーク・ライフ・バランス 姫路地域セミナー

事例1 富士通周辺機株式会社  事業支援統括部担当部長 大植光展氏

2005年以降、富士通グループ全体でダイバーシティ(多様性)の理解と推進に努めてきました。しかし取り組みが制度中心になっており、社内の実態を調べてみる必要があると思い、12年に現状分析を実施。その結果、昇格年齢や業務内容に男女差があったり、女性社員の半数以上が男性優遇を意識していたりするなど、男女間でのギャップや女性活躍に関する幹部社員の意識の低さが浮き彫りになりました。
そこで社長を委員長とする「ダイバーシティ・ワークライフバランス推進委員会」を設置。ダイバーシティに関する理解と行動を社内に根付かせるため、制度改革や〝人財″育成などに取り組むことになりました。
制度改革では女性の活躍推進を目的に、出産・通院休暇や産前・産後休暇、育児休業などの出産・子育て支援制度を拡充。人財育成については役員、幹部社員、女性リーダーなど階層別に意識改革、行動改革を促す研修を充実させました。女性リーダー育成研修では、課題解決力やリーダーシップなどが学べるプログラムを整えています。
14年度の従業員満足度調査では総合満足度50%でした。道半ばですが、今後も社員がお互いを認め合い、個々の価値を発揮できる職場づくりに取り組んでいきます。

事例2 神姫バス株式会社  企画部子育て支援推進課長 吉川敏子氏

バスの運転士は男性の職域という意識が根強く、バス会社の女性比率は決して高くはありません。神姫バスの場合、本社の女性比率は37%ですが、運転士が在籍する営業所では1.7%とかなり低くなります。そのような中、女性運転士の活躍推進や採用拡大、また神姫バスグループとしての子育て事業の充実を図るなど、女性が活躍できる職場づくりに力を入れてきました。
女性をサポートする取り組みとして、2015年4月に2つの制度を新設しました。一つは「キャリアリターン制度」です。社員が出産や育児、介護などを理由に退職する際に再入社の希望を登録できる制度で、生活環境の回復後にまた働いてもらえるようにしました。もう一つは「マタニティ休業制度」で、女性運転士が妊娠した際、本人の希望により産前休暇前日まで休業することができます。
各種の研修制度も拡充したほか、設備面の改善も図ってきました。特に男女共同のトイレと休憩所では女性運転士が利用しづらく、各営業所に女性専用のものの設置を進めているところです。
15年には、育児休業を取得した女性運転士が職場復帰を果たしました。今後も女性活躍推進に対する社内意識の向上に努め、女性が戦力として活躍できる環境をつくっていきます。

事例3 株式会社日本政策金融公庫  姫路支店長 菅井雄一氏

日本政策金融公庫の女性職員数は約1,700人で、全体のおよそ2割に該当します。そのうちエリア職(定型業務)が約7割を占めることもあって、従来、女性エリア職の職場環境の改善に努めてきました。
現在はエリア職のサポートにとどまらず女性の職域をさらに広げるため、毎年新卒女性総合職の採用比率30%、管理職に占める女性の割合を2018年4月に5%(15年4月現在2.7%)にすることを目指しています。そのために①女性のキャリア開発②ワークライフ・マネジメント支援③職員による積極的な活動推進を3本柱に取り組みを行ってきました。
①として女性職員のキャリア形成を支援するとともに、先輩女性職員が若手のメンターとなって仕事と家庭の両立に関する相談に乗れる体制を整備。②では転勤特例制度や育児休業制度など女性のライフステージに合わせた支援制度を充実。③では「女性活躍推進地域委員会」を設置し、各職場で女性活躍の定着を自発的に図っています。
当公庫では女性職員の能力は男性と同等、あるいはそれ以上と評価しています。今後も女性を貴重な戦力として捉え、女性職員が当たり前に活躍できる組織の実現につなげていきます。

ワーク・ライフ・バランス 姫路地域セミナー

意見交換

三崎

大植さんの報告では、社長が旗振り役となって取り組みを推進されている点が印象的でした。トップや役員が組織に働き掛ける効果をどのように感じていますか。

大植
当社の場合、現状分析の段階から社長が参加していますし、毎年行っている成果発表会や社内のイントラネットでもトップメッセージを発信しています。そうやってトップの意見が組織に浸透することで現場は安心して取り組めます。
三崎
一つの部門の推進だと限界があるということでしょうか。
大植
ダイバーシティに限らず、何か新しい取り組みにチャレンジするときはトップを巻き込んで行うのが早いと感じます。今回の取り組みを始めるに当たっても、まず社長に相談して進めていきました。
三崎

次に吉川さん、運転士は男性の職業という意識が強い中、女性の採用拡大を進めるためのポイントを聞かせてください。
吉川

男性運転士が多いのが現状ですが、運転技術やお客さま対応などの面で男女間に差が出るということはありません。むしろお客さま対応については女性の方が評価が高いです。今後、当グループでは女性運転士の採用をさらに拡大したいと考えています。
三崎

職域拡大という意味では、日本政策金融公庫さんの事例も興味深く聞かせていただきました。現在、女性管理職と女性総合職の登用・採用比率を高めようとされていますが、女性の活躍の幅が広がることで問題となりやすい人事評価のポイントを教えてください。
菅井

融資業務は簡単ではありませんから、最長3年ほどかけて人材育成を行います。一人前になるまでには時間がかかりますが、女性総合職が育った後の評価は男性とまったく同じ土俵に引き上げます。男女問わず公平な尺度で評価ができるため、評価面で困ることはないですね。
三崎

現在はITの進展で補助業務の比重が下がっていますし、バスに関してはステアリングが軽くなって肉体的な負担も軽減されているようです。優秀な女性はサポート業務のみに従事してもらうのではなく、組織の戦力として活躍してもらう。そうした時代を迎えていると、あらためて認識しました。

まとめ 兵庫県立大学経営学部 教授 三崎秀央氏

近年、「ダイバーシティ」と「ワーク・ライフ・バランス」の2つがセットで語られています。前者は多様な立場や価値観を持つ人が制約条件の中で能力を発揮できる社会や組織をマネジメントすること、後者は仕事と家庭の調和を図る発想です。多様性を生かすためには長時間労働を前提とした仕組みではうまく機能しませんから、さまざまなスタイルの働き方を受容するための仕組みと運用が不可欠となり、両者を同時に考えることが求められるようになったのです。
今回のセミナーの主題である「女性活躍推進」に関しては、従来は福祉政策の一環として捉えられることもありました。しかし現在では企業の業績や組織の成果との関係で捉えられています。
その意味で、事例を紹介いただいた3社は戦略が確立しています。女性の職域拡大、男女の公平な人事評価に焦点を当てるなど、制度を整えた先の運用に重点が置かれています。制度は必要条件であり、活動の肝は戦力化、企業の業績アップにつなげることにあります。女性活躍推進の取り組みを組織に根付かせる最重要ポイントといえるでしょう。