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全社挙げて多能工化推進

株式会社セイバン

所在地 たつの市揖保川町山津屋早瀬140-14
事業内容 ランドセルの製造・販売
従業員数 271人(男性97人、女性174人)
冊子掲載 平成30年度版WLBな会社ガイド
公開日 2019年2月7日

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

「天使のはね♪」のCMで知られ、ランドセル業界で約3割のシェアを誇るセイバンは、2年前から全社を挙げて多能工化の推進に取り組んでいます。同じ作業ゾーンの中で仕事量に偏りが生じればすぐにサポートに回る体制を築くことにより製造ラインが円滑に流れるようになり、時間外労働の削減にもつながりました。

熟練技術者から部品の製法について学ぶ女性社員。自発的にスキル向上を願う人が増えてきました。

山と積み上がっていた仕掛かり品

 同社は西播磨エリアにある3工場で生産しており、姫路工場で製造された肩ベルトや前ポケットなどのパーツが、波賀工場と室津工場で組み立てられランドセルとして完成します。パーツの生産から組み立てに至るまでは約400もの細かい工程に分かれており、作業者はこのうち一部だけを担当する単能工として働くやり方が長年続けられてきました。
 以前は、次の工程へと渡されていく仕掛かり品が、あちらこちらで山のように積み上がり、作業の流れが滞っている光景が日常茶飯事でした。「作業がたまっている人を手伝いたいと思っても、スキルがないから見ているしかありませんでした。作業効率が悪いので残業もおのずと増えていました」と経営管理部部長の喜多敦夫さん。長い休みを取ろうとすれば自分の担当分を作りだめしておかなければならず、休みが取りにくい状況が続いていたことも問題になっていました。

姫路工場主任の金本さん(右)と波賀工場主任の亀井智子さん。

作業者の技能レベルを見える化

 そこで2年前、トヨタの生産方式を参考にした作業効率化の手法を学ぶ外部研修を受けたメンバーが中心と
なって、全社で業務量の偏りを改善するプロジェクトに取り組むことになりました。
 まず400ある工程を30のゾーンにまとめ、各ゾーンを担当する作業者はゾーン内の全ての工程に携われるようスキルを磨いていきます。各工程は業務難易度によって5つのレベルに分類され、作業者はそれぞれの工程について、スキルのレベルを5段階で評価されます。
 同じゾーン内で仕掛かり品がスムーズに流れるように、スキルを考慮した上で作業者の担当と配置を決定。「仕掛かり品が2山分滞った時点で、余裕のある作業者は手を止め、遅れている他の人の応援に入る」というルールを定めました。
 また、ゾーンには作業者とは別に“ミズスマシ”と呼ばれる人を配置しています。ミシンに使う糸がなくなりそうになるとその手配をしたり、停滞しそうな所をサポートしたりする役割で、ゾーン全体を見渡しながらスイスイ動き、全体の作業が円滑に流れるよう役割を果たしています。

全体の作業が円滑に流れるよう400ある工程を30のゾーンにまとめスキルを考慮しながら作業者の担当と配置を考えました。

さらなるスキルをとやる気向上

 今では、作業者は皆てきぱきと働き、無駄な動きがありません。あるゾーンでは、1日の目標生産個数を400に定め、1時間ごとにリーダーが進捗状況を管理し、達成すると大きな声で全員に知らせています。「以前は1日300個作るのに皆が2時間の残業をしていましたが、今では400個を定時内で作れるようになりました」と技能の審査も務める姫路工場主任の金本法子さんは効果を語ります。
 仕掛かり品がたまっていた作業台が不要になり、生産ラインが短くなっただけでなく、いろいろな人が工程に関わるようになったことで新しい視点での気付きが生まれ、さらに作業が効率化しています。
 もう一つ大きな効果があります。ランドセルは需要が夏に集中するため、需要に応えるためには夏までに作りだめをしておかなければならず、倉庫にランドセルが積まれている状態でした。
 現在は、作業者のスキルが上がったことで需要の多い時期でも供給が可能になりつつあります。そして、需要の少ない時期を多能工化の訓練に充てることができるようになっています。
 「一人一人のレベルを見える化したことで、もっと自分のスキルを向上させ、一通りのスキルを身に付けたいという人が増えています。就業時間後に自発的に学ぶ人も多く驚いています」と金本さんは笑顔を見せます。
 多能工化の推進により工場部門の退職者数は、2016年の25人から17年は15人に減り、18年はさらに減少しています。また、残業時間の総計は16年の2万7,000時間から1万2,000時間に半減。その一方で、1人当たりの有給休暇取得日数は着実に上昇カーブを描いています。

多能工化の推進により工場部門の退職者は減少しています。

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