昭和精機株式会社 長く働き続けられるよう 従業員の状況や意思を最大限に尊重

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

2人の子育てをしながら会社の経営に当たってきた女性社長の経験から、仕事と家庭を両立させることを第一に考えた働き方や休暇制度を推進している昭和精機。従業員に対しては、可能な限り本人の置かれている状況や意思を尊重し、長く働き続けられるように最大限の配慮をしてきた結果、男性の職場といわれた製造現場で活躍する女性も出てきました。

「会社より家を大事に」

「会社より家を大事にしてください」。子どもを持つ従業員が入社する時に、藤浪芳子社長が必ず伝えている言葉です。そして「将来は会社の主軸になって働いてください」とも言います。小さい子どもがいるパート女性従業員を採用した場合、まず子どもの年齢や本人の希望に合わせます。例えば、1日4時間勤務から始め、子どもの成長に合わせて終業時間を15時から16時、16時から17時と1年に1時間ずつ増やして8時間になったところで正社員として採用する、というような方法をとっています。「限られた時間しか働けないと思う気持ちがあるからでしょうか。短時間勤務で働いている従業員は密度の濃い働き方をします。そういう姿勢がフルタイムで働いている人にもいい影響を与えています」

また、定年退職後も働ける範囲で従事するケースがあります。「最近まで、74歳の人が7時から15時までという勤務時間で働いていました」。あくまでも本人の状況、意思を尊重して働いてもらうのが同社流です。

このように働く人を大切にする風土には藤浪社長自身の経験が大きく影響しています。専業主婦だった34歳の時にいきなり社長に就任。以来、電子技術と各種機構を組み合わせた各種制御機器のメーカーとして国内のみならず、中国、タイ、米国へも販売先を広げるなど事業を発展させてきました。「2人の子どもがいたから、がむしゃらにやってこられた」と、子育てと経営を両立させてきたこれまでを振り返ります。加えて、「中小企業は採用に苦労しています。大切に育て技能を身に付けてもらっても、辞めてしまったら大きな損失です。

従業員の皆さんにはできるだけ長く働き続けてもらいたい」との思いもあります。そ2人の子育てをしながら会社の経営に当たってきた女性社長の経験から、仕事と家庭を両立させることを第一に考えた働き方や休暇制度を推進している昭和精機。従業員に対しては、可能な限り本人の置かれている状況や意思を尊重し、長く働き続けられるように最大限の配慮をしてきた結果、男性の職場といわれた製造現場で活躍する女性も出てきました。
そこで個々の事情に合わせ勤務時間だけでなく、休暇についても柔軟に取れるように配慮してきました。

多能工化を進め仕事をカバー

併せて、急な休みの時には互いがカバーし合うなど、安心して働けるように多能工化を進めてきました。「うちの場合、多品種少量の製品を造っているので、製造現場ではこの仕事はこの人という個人技の集団になりがちです。そこで各仕事をばらして、いろいろな仕事が経験できるように予定表を作ってローテーションで回すようにしています」。それぞれがNC旋盤、マシニング、汎用旋盤、ワイヤーカットなどの主担当を持ちながら、主担当とは異なる機械も操作できるようにしているそう。さらに社内には、「困ったときはお互いさま」という気持ちが根付いています。

製造現場にも女性を採用

＂男性職場＂の製造現場には近年、女性も希望して入社してくることが多くなっているといいます。大北莉加さんは「機械が大好き。どうしてもものづくりをしたい」と8年前に入社、周囲のサポートを受けながら工作機械の操作を学んできました。一番苦労したのは工作機械への重たいワークの取り付け。そこで、同社ではリフト機能を使って誰でも重量物を簡単に持ち運びできる機械を導入しました。「製造部門では女性というだけで入り口で『ノー』と言われ、門戸が閉ざされている。でも、うちは能力とやる気さえあれば受け入れています。力の部分さえ機械でカバーすれば、男女の差はないと思っています」と藤浪社長。その言葉を裏付けるように、大北さんは今や4人の部下を持つ主任として、若手の指導にも当たっています。