「年間休日130日」を掲げ生産性や職場環境を改善

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

「このままでは生き残れない」。3年前にそんな危機感を持った明石プラスチック工業の代表取締役社長、生水口高志さんは「年間休日を130日に」を目標に、生産性向上と職場環境の改善に尽力。目標をクリアした現在も、さらに働きやすい職場にするため取組を続けています。

選ばれる企業に向け目標を掲げる

　2017年の就任から間もなく、生水口社長は10年ビジョンを策定。他社が手掛けていない熱硬化樹脂プーリー（歯車）を戦略商品に位置付けて売り上げ・利益目標を定めるとともに、働き方改革を進めていく決意を固めました。「当時は、社員が朝から晩まで働き続け、3K（きつい、汚い、苦しい）の職場に問題意識を持つこともなく、ただ目の前の仕事をこなしているだけでした。生産年齢人口が減少していく中で、このまま埋もれていては若い世代に選ばれず生き残ることはできないと強い危機感を持ちました」と振り返ります。
　まず、当時118日だった年間休日を、2020年までに大企業並みの130日に増やすことを目標に掲げました。「休日が増えることで労働時間が短くなり、アウトプットが下がるため、当面は売り上げ、利益を減らすことになってもやむを得ないと思っていました」と覚悟の程を語ります。

見える化のモデルを示し水平展開

　生産性を向上させるため、手始めに5S（整理・整頓・清掃・清潔・しつけ）活動からスタート。組織横断のメンバーによるプロジェクトチームをつくり、現場の問題点を洗い出し、改善を図りました。例えば、製造途中の仕掛かり品を入れるコンテナボックスの床へのじか置きや重ね置きをやめました。そうすることで、仕掛かり品がほこりをかぶることなく、次工程での清掃の手間が省けます。現場の5Sが徹底できているかどうかは毎月5Sパトロールを実施し、60項目についてチェックを行い改善を確認しています。
　作業工程の見える化にも取り組みました。「組織がタコつぼ化し、誰がいつ何をしているのか分からない状態でした」と生水口社長。そこで、ホワイトボードを機械のそばに置き、設計図面や設備の稼働状況、使用期限、担当者名などを掲示しました。まずはモデル的に1台の機械で情報共有を行い、生産の効率化を図るとともに設備の保全意識を高めました。その成果を確認した上で、他の機械にも水平展開。結果、製造期間の短縮につながりました。
　しかし、生産性が上がったことで従業員の労働時間が減少。その分残業、休日出勤が減り、現場からは不満の声も上がったといいます。「給与が減った分は職務手当などでカバーしました」。加えて、経営計画方針会などの場で、生産性向上や優秀な人材獲得といった、130日の休日取得を目指す意義を繰り返し説き、浸透を図りました。

旧食堂をラーニングコモンズに

　また、「言われたことを懸命にやる」という姿勢だった従業員たちに、もっと能動的な発想で提案が出るように2020年4月、社内に主体的に学べる場「ラーニングコモンズ」を整備しました。旧食堂をリニューアルして新たに机や椅子を置き、職場の自分のデスクとは別の居場所を創出。一角にはレンタル図書コーナーを設けました。昼休みなどの休憩時間に気分転換が図れるようトレーニング器具も設置しています。
　こうした取組の結果、総労働時間は2017年から2年間で4.2%減少し、有給休暇取得率は約0％から60％に上昇。2年連続で売り上げ、利益の増加を実現し、20年度には目標通り、年間休日130日取得を制度化しました。「本年度の新卒採用でこうした取組を学生に情報開示したところ、国公立大学や有名私立大学からの応募が増えました」と、生水口社長は手応えを感じています。
　今後は、あらゆる世代が活躍できるよう従業員のライフステージに合わせ、時短勤務やデジタル部署などの制度を整えていきたいとのこと。さらに働きやすい環を創出し、10年ビジョンに掲げた「兵庫県を代表するものづくり成形加工メーカー」に向け、まい進します。