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昭和精機株式会社 子育てや介護の経験を生かし 幸せに働き続けられる会社に

昭和精機株式会社

所在地 神戸市西区高塚台6‐19‐13
事業内容 電子プログラム制御機器、プログラム制御機器、油圧・空圧制御機器などの 製造・販売
従業員数 34人
冊子掲載 情報誌 vol.20 2014年夏
公開日 2014年7月10日

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

昭和精機(株)の2代目社長として手腕を振るう藤浪芳子さん。女性や母親としての経験を経営者の視点に生かし、各従業員の実情に合わせた多様な働き方ができる環境づくりに取り組んでいます。

代表取締役 藤浪 芳子さん

逆境の時こそ従業員を第一に

産業機器に欠かせない電子プログラム制御機器や油圧・空圧制御機器などを製造・販売する同社は、1947年に小さな鉄工所からスタートしました。父親が立ち上げた会社を、藤浪さんが担うことになったのは81年、34歳の時。専業主婦として8歳と4歳の子どもを育てながら祖母を介護する日々から一転、ビジネスの世界に足を踏み入れました。

「経営能力はおろか業界に対しての知識も全くなく、〝主婦の顔″をして座っているだけ」のトップに不安を抱いた管理職は次々と会社を離れ、従業員も半減しました。危機感を抱いた藤浪さんは、そこから寝る間を惜しんでビジネス書や専門書を読み込み、営業に走り回る傍ら工場で従業員と製品開発に励み、給料日前には机に向かって数字と格闘するなど、あらゆる業務をこなせるまでに成長。会社のために奔走する姿を見せることで従業員たちの信頼を得ていきました。「従業員から『社長』と呼んでもらえるまでに3、4年かかりましたね」と笑顔で振り返ります。

現場に頻繁に足を運び、日頃からコミュニケーションを取っています。

また、技術者を自ら探し歩いたり、中学校を卒業したばかりの若者たちを一から育てたりと新しい人材の確保にも労力を注ぎました。バブルが崩壊し受注が減った時は、個々の能力を高める時期と捉え、研修や資格試験の勉強に充てました。阪神・淡路大震災で被災した時も、遠方から通う人のために送り迎えをしたり、自宅の一室を提供したりと労使で支え合って乗り越えました。「震災で従業員との絆がさらに深まりました。苦労して培った信頼関係だからこそ、何よりも大切にしてきたつもりです」と話します。

家庭を思う気持ちをサポート

一方で、働き始めてからは夜遅くに帰宅することも多く、子育ては母親に任せっきりに。「一番甘えたい時期にあまりそばにいてあげられなかった。子どもたちは口にこそ出さないけれど、寂しい思いをしていたと思います」と言葉を詰まらせます。

その分、従業員に対しては、育児休業制度や短時間勤務制度の利用はもちろん、保育園への送り迎えの時間の調整や病気になった場合の急な休暇の取得など、状況に応じて無理なく働けるようにサポートしています。「一人ひとり望んでいることは違います。制度でひとくくりにせず、本当に困っていることは何かを聞いてあげるのが重要ではないでしょうか」

年3回の個人面談では、それぞれが抱えている問題を聞き取っています。特に介護に関しては長期にわたる場合が多く、周りの仲間に気を使って退職してしまうケースも少なくありません。「私も経験がありますから、家庭を大切にしてほしいという気持ちと、せっかく身に付けた技術を無駄にしてほしくないという思いの両方があります」と藤浪さん。「悔いのないように」と伝え、話し合いながら、長い目で見て考えられる多様な働き方を提案しています。

製造ラインでリーダーシップを執る女性技術者。

助け合える職場を目指して

子育てや介護について、「自分の身にも起こり得ることと考えて」と理解を呼び掛け、支え合う環境を整えています。急な欠員にも対応できるよう、数年前からは作業内容を共有する多能工化にも取り組み始めました。

そのためには従業員全体の能力アップを図ることが不可欠です。未経験者の採用が比較的多い同社では、先輩が一から教えて若手の力量を延ばしていく体制が自然に出来上がりました。女性も例外ではなく、営業や生産管理、製造とさまざまな職種で活躍。製造現場の一部門で主任を務めている技術者もいます。分け隔てのない配属や昇給がモチベーションの維持や技術力の向上にもつながっています。「従業員とその家族が幸せであることが何より。そのため、仕事にやりがいを持ち、安心して長く働いてもらえる職場づくりに取り組まなければいけません」

第一線を走り始めてから30年を超え、そろそろ退任の時を考えるようになったという藤浪さん。痛みを分かち合える「家族のような会社」を目指して働く母親の背を見て育った息子へと、その思いをつないでいきます。

被災した従業員を勇気づけるために創業50周年記念式典を開催。

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