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尼崎地域セミナー in 2014 経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス

フェスタセンター主催事業 投稿日2014.9.16

開催要項

開催日・場所

平成26年9月16日・尼崎市中小企業センター

基調講演

テーマ 『本気の女性活用』による企業力向上
講演者

リクルートワークス研究所 主任研究員 石原直子氏

事例紹介・パネルトーク

コーディネータ

関西学院大学経済学部教授 西村智氏
パネリスト

株式会社関西工事 代表取締役 久木元悦子氏
株式会社TAT 人事総務部長 土居香織氏
メック株式会社 IR室長 坂本佳宏氏
9月16日に尼崎市中小企業センターで「尼崎地域セミナー2014 経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス」が、翌17日には県立男女共同参画センターで「神戸地域セミナー ワーク・ライフ・バランス『女性活躍』のいまを考える」が、それぞれ地域の事業所の経営者や人事担当者を対象に開催されました。女性が無理なく働け、活躍できる会社とは―。経営側が行うべき取り組みを、基調講演と女性の活躍推進に取り組む先進企業の代表者によるパネルトークで探りました。

基調講演『本気の女性活用』による企業力向上

石原直子氏

皆さんの会社は、ワーク・ライフ・バランス施策を導入していますか。また、それに掛かるコストを把握していますか。

 

企業の大小に関係なく、ワーク・ライフ・バランスの推進が一般的になりつつあります。しかし、その取り組みに掛かる費用を上回る利益を得られていないのではないでしょうか。
女性の活躍推進については、1986年から、労働上の男女差別の撤廃や労働人口の確保、少子化対策を目的に、育児休業や短時間勤務制度といった、育児と仕事を両立する女性を支援する制度が充実してきました。ところが、結婚や出産をしていない女性や男性にしわ寄せがいき、ここ1、2年は周りの人が疲弊してきています。「ワーキングマザーにもう少し頑張ってと言いづらい」「育休後に戻ってくる人は100%になったけど、正直しんどい」という声も耳にしました。

 

一方で、管理職や取締役に就く女性の数にはほとんど変化がみられません。他の先進国と比較すると10分の1程度とその差は大きく、中途半端にしか女性を活用できていないのが現状です。女性が働き続けられる環境を整えると同時に、活躍する女性を増やすことが重要だと思います。女性の力をいち早く、十分に活用し、女性に選ばれる会社になるのはどこか、その競争はすでに始まっていると言えます。

 

女性の活躍が企業にとってなぜいいのかというと、商品購入の最終的な判断をするのは女性の場合が多く、商品の生産・販売に当たっては女性ならではの視点が求められるからです。加えて、異なった観点や意見を持つ人を重要な意思決定の場に入れることで、致命的な判断ミスを防ぐことができ、経営上のリスク回避につながるといったメリットもあります。差別なく能力の高い人を評価することは、ダイバーシティの考え方が進む海外で事業を展開する際に、信頼の構築に繋がります。

 

では、企業側がどう取り組めばいいのかを紹介します。結婚や出産を迎える30歳前後までに、約5年で一人前に育ててください。復帰後にすぐに活躍できるよう能力を高めておくことで、その後のキャリアアップもスムーズになると考えられます。また、30代半ばの女性には「もう十分仕事をやり切った」と辞めていく人も多くいます。異動や大口顧客の引き継ぎ等において無意識の差別をなくし、2、3年ごとに環境を変えながら経験を積ませ、さらに難しい職務を与えてほどよくプレッシャーをかけることで、仕事に飽きさせないなどが重要です。
女性に活躍する場を与えることは、一生懸命働いてもらうために進める施策です。コストを掛けてリターンがないと全く意味がありません。どう働けばいいか悩んでいる女性に選ばれる会社になってほしいと思います。

基調講演 事例紹介・パネルトーク

左から、久木氏、土居氏、坂本氏、西村氏

西村
社内における女性の活躍状況を教えてください。
久木
元男性中心の溶接施工会社のほかに、自社製品を使った女性向けの健康サロンを経営しています。そこでは、男性がしている仕事を女性へとやみくもに振り替えるのではなく、女性の長所を生かせる所で活躍してもらう。うまくすみ分けをしています。
土居
当社は、ネイル用品の卸商社です。従業員217人のうち70%が女性で、管理職でも70%を占めており、女性の活躍推進の取り組みというよりも、スタッフみんなが働きやすい環境をつくろうと考えています。
坂本
従業員170人の32%、課長以上の管理職の23%を女性が占めています。当社の社是は仕事を楽しむことで、それには男も女も関係ありません。社の売り上げを支える主要商品を女性が開発するなど、研究・開発の分野でも多くの女性が活躍しています。
西村
女性が辞めていかないための取り組みをしていますか。
土居
朝礼や会議で個々の意見を発表する機会があり、普段から自分の考えを言える環境です。社長をはじめとするスタッフみんなが家族のようにフォローし合い、お互いを大切にする風土があり、育児休業後の復帰率も100%になっています。

西村
子育てや介護をしながら仕事を続けるために大切なことは何ですか。
久木
元自社の商品のファンになること、その仕事を好きになることだと思います。
西村
育児や介護による休業や時短勤務で本人が抱く罪悪感や、周囲に生じる不公平感に対して何か対策をしていますか。
坂本
最近は、短時間勤務中の営業職の女性から「お客さんの電話に16時以降対応できず、非常に罪悪感がある」という声を聞き、他部署への異動の希望に応えるジョブリクエストシステムを勧めたという事例があります。個人の事情に合わせ、適材適所に配置することが重要だと思います。
土居
夕方は保育園にお迎えに行かないといけないけれど、朝は余裕があるという場合、時短に抵抗がある人には始業前の出勤も可能にするなど、現在は一人ひとりの働き方に対応しています。
西村
働く上で男性と女性で違いはありますか。
坂本
転勤の話を出す時に辞められるのではないかとちゅうちょしたりはしますが、基本的に男性だとか女性だとか、そういう意識はしていません。
久木元
とにかく一生懸命仕事をやってくれれば性別など関係ありません。
西村
女性の活躍推進に対して、経営側の意識が高いことが重要です。仕事が楽しいことや評価をきちんとしてもらえることがやる気になり、結果的に女性が辞めない体制ができるのかなと思います。細かい制度やルールは個人に合わせてその都度つくっていけばいいのかもしれません。