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平成26年度 仕事と生活の調和の実践に向けて 5周年記念フェスタを開催

フェスタセンター主催事業 投稿日2014.11.11

開催要項

開催日・場所

平成26年11月11日・兵庫県公館大会議室

パネルトーク

ファシリテーター

兵庫県立大学経営学部 学部長 開本浩矢氏
スピーカー

伊藤ハム株式会社 管理本部 人事総務部 鈴木真理子氏
有限会社システムプラネット 代表取締役 森崎美紀子氏
ひょうご仕事と生活センター 上席相談員 北尾真理子氏

特別講演

テーマ 残業ゼロを実現する~WLBと働き方の見直し~
講演者

吉越事務所 代表 吉越浩一郎氏

トークセッション
勘違い経営からの脱皮 ~経営者の知らない従業員の本音~

左から開本氏、鈴木氏、森崎氏、北尾氏

開本
ワーク・ライフ・バランスは利益につながるのかとよく聞かれます。報告結果を見ると、満足している人は、会社への定着意識も高いことが分かりました。数字で客観的に示された意義は大きいです。調査から見えてきた課題と対策についてお聞きしたいと思います。
鈴木
課題が2つ浮かび上がりました。有給休暇を取得しづらいと感じている人が多いこと、女性社員の多くが将来管理職を目指したくないと考えていることです。後者は管理職になるとワーク・ライフ・バランスが崩れるからというのが最大の理由です。会社全体で効率的な働き方を目指さなければなりません。今年度は役職者の目標に業務改善のテーマを盛り込んでもらうことにしました。
森崎
「女性が働き続けられる会社に」との思いでやってきましたが、調査では長く働き続けたいかという問いに、「なんとも言えない」と答えた従業員が結構多かったことにショックを受けました。部門間のコミュニケーション不足、人材育成不足が問題だと思います。センターの協力を頂いて研修を行い、改善しつつあります。
北尾
アンケートを取ったとしても、その結果を踏まえて行動計画を立て、実践しなければ意味がありません。2社ともすぐにできることから行動されているのが素晴らしいです。

勘違いの解消はオープンなコミュニケーションから

開本
今日の大きなテーマが「勘違い経営からの脱皮」。ワーク・ライフ・バランスを進める上での勘違いについて話を聞きたいと思います。経営者、従業員の立場から、何かネックになる勘違いがあればお願いします。
鈴木
当社では育児による短時間勤務者が増えていますが、一部の上司からは、短時間勤務者は仕事の割り当てが難しく活用しづらいという声も聞こえます。残業をいとわない働き方が望ましいという意識が根強く残っていると感じます。
森崎
育児休業の他に短時間勤務、子どもの看護休暇、在宅勤務制度などを整備していますが、育児休業以外の制度についてはほとんど知られていません。そこで共有フォルダに最新の情報や規則などを入れて、いつでも社員が見られるようにしています。ミーティングでもアナウンスし、上司からも声を掛けてもらっています。
北尾
優秀な管理職は長時間労働をしなくても仕事を采配できる人です。女性だから長時間労働ができないということで管理職の道をあきらめないでほしいし、その道を断たないでほしいです。勘違いをなくすには、オープンなコミュニケーションはもちろん、教育が重要です。それも一方的な講義だけでなく、多様な社員によるグループディスカッションを取り入れて、お互いを発見できるような機会を設けるのが有効だと思います。
開本
男性管理職の立場で考えると、女性の部下が妊娠しているとつい仕事を任せていいのかと考え、遠慮してしまいがちです。

北尾
「あ、うんの呼吸」で、あるいは「言わぬが花」などと言って、相手の気持ちを推し量っていては勘違いが起こるもとです。何でも言い合えるオープンなコミュニケーションがあれば解決できることもあります。
開本
上司からの言葉でつらかった言葉はありますか。
鈴木
妊娠中に体調を崩し重要な仕事に穴をあけてしまい、「体調管理も仕事のうち」と言われた時には、頭では理解する半面、やはりつらい思いもしました。日頃のコミュニケーションと信頼関係がとても重要だと思います。
森崎
経営者として、ライフイベントを抱えている社員に対しては様子や表情を見て声を掛けるようにしています。調査の後、3、4人のグループでミーティングを始め、お互いの状態を話すようになりました。話しやすい雰囲気ができつつあると思います。

制度の内容ではなく運用を競うステージに

開本
残業を減らすためにできることは何でしょうか。
鈴木
既存の制度を見直して改善することが大切です。当社は勤続5年ごとに3日連続の休暇が取得できます。今は業務の都合により1日単位での取得も可としていますが、例えば3日連続の取得を義務付ければ、必然的にマニュアル化、情報共有化が進み、お互いに仕事をカバーし合えるようになっていくのではないでしょうか。
森崎
有給休暇の取得がなかなかできていません。上司が休まないからだと思っているので、私自身も積極的に休むつもりです。
北尾
今まで続けてきた働き方を変えるのには勇気がいります。変えることで業績が下がるのではとの不安もあるでしょう。ただ、実際にやってみたらそれほど大変なことではありません。思い切って変えていくことが見直しにつながると思います。
開本
日本は先進国の中でも労働生産性が低い国です。長く職場で働く人を評価する仕組みを変えないといけません。また制度をつくったことで満足せず、どう活用するかを考えてほしいです。ワーク・ライフ・バランスの制度の内容を競うのではなく、運用を競うステージに来たと思います。

特別講演
残業ゼロを実現する~WLBと働き方の見直し~

吉越氏

今日は、最後までやりきることがいかに重要かということを知っていただきたいと思います。
私が勤めていたトリンプ・インターナショナルはスイスに本社があります。1983年から3年間香港で働いた後、86年から日本法人の代表取締役副社長、92年に社長となり、2006年11月まで務めました。その間、直営店の展開で業績を伸ばし、売上高は就任時の100億から退任時には524億に増え、全世界の売上高の4分の1を占めるまでになりました。
ワーク・ライフ・バランスはフランス人の妻仕込みです。「日本人は家庭をつくることを知らないんじゃないか」といまだに言われます。奥さんと仲良くしておかないと退職後の人生は悲惨です。仕事をしているうちは仕事をゲームと考え最高のゲームをし、定年を迎えたら会社とはさっと別れなければならないのです。
日本人は体力を使うと仕事をした気になりますが、会社は何に対してお金を払っているのかというと能力です。能力を発揮するにはそのための態勢を整えなければなりません。早く帰って休むのが一番です。日本人は体が疲れる残業ばかりしているために仕事のレベルが低くなり、私生活に使う時間もありません。退職後のために自分で人生をつくらないといけないのです。

仕事にデッドラインを設ける

ではどうすればいいのでしょう。業務の効率化とそのための仕組み作りが不可欠です。まず残業をなくして時間内に仕事を終えることです。そのためにはデッドラインを設ける必要があります。デッドラインを設けるとは、「誰が」「何を」「いつまでに」を明確に指示することです。そうすることによって、どうすれば時間内に仕事をこなせるかを考えるようになります。ぜひ全ての仕事においてデッドラインを決めてほしいと思います。最初はできないかもしれませんが、1、2年続けた人とそうでない人では実力の差がとても大きくなります。仕事のスピードと質で負けなければ必ず実績が上がります。
重要度を縦軸に緊急度を横軸に取って仕事を分けてみましょう。緊急度が低い2つの分類(緊急度低・重要度高、緊急度低・重要度低)の仕事についてはどうもほったらかしになります。皆さんが上司なら何をすべきでしょうか。この2つの分類に属した仕事についてデッドラインを設けるのです。ついつい、緊急度の高い2つの分類(緊急度高・重要度高、緊急度高・重要度低)の仕事に対して時間を掛けがちですが、これを許すと極めて非効率になるのです。
そこで忘れていけないのは、靴がそろえてある、トイレがきれいといった緊急度も重要度も低い仕事をしっかりやることです。一事が万事で、そこまでできている会社は全てにおいて徹底しているからです。徹底度で会社のレベルが決まります。そして、緊急度が低く重要度の高い仕事として、IT化、マニュアル化を進めていくと、もっとレベルの高い仕事ができるようになります。

仕事を任せて人を育てる

私は29歳の時にドイツのコーヒー会社メリタの香港事業所で働いていました。本社からもう一人同年代の同僚が来ました。私は売り上げのためにひたすら自分で走り回ったのですが、同僚はまず新聞広告で秘書を探しました。何が起きたか。1時間に100の仕事をすると1日8時間で800の仕事ができます。しかし私は60のレベルの低い仕事で時間の半分が取られていました。すると私の仕事量は100×4+60×4=640です。同僚はレベルの低い仕事を秘書に任せ60×8=480、同僚は100×8=800で合計1280。2人雇っているのだから、私の倍になって当然と思うでしょうが、秘書に払う給料はわれわれの30%に過ぎません。つまり3割の追加投資で倍の仕事ができるわけです。日本人はそういう発想が苦手です。
会議では私が真ん中に座り、私が置いた書類をテレビ会議で見られるようにしながら皆で議論します。個人の収入と公表前の人事情報以外は全てオープンです。同じ情報を持てば同じ判断ができるとの考えからです。朝の会議は課長以上が集まり、1議題当たり2分で結論を出します。そして出た結論に関しては担当者を決め、次の日までにやってくださいと指示します。担当者はそのテーマについてロジックに基づいて誰もが納得するように説明できないといけません。詰めが甘いと、明日までにやり直しとなります。担当者に任せることが重要で、担当者は自分で考えることでその経験が暗黙知になっていきます。トップダウンではなくボトムアップ。場を与えて、育ってもらわないといけません。

何事にも徹底して取り組む

初めは金曜日をノー残業デーとしました。私が18時半になったら有無を言わさずオフィスを消灯するので、最初は皆驚いていましたが、毎週やっているうちに当たり前になっていきました。それなら水曜日もと、やってみると同じことが起きます。それなら毎日やろうということになり、残業ゼロになりました。
もし何か問題が起きたら、緊急対策とともに再発防止のための横展開が重要です。横展開とは、「他部門でも似た問題が起こりませんか」ということ。ノー残業デーを徹底させるために、どうしても残業をしなければいけない場合は事前に直接言ってくださいと伝えていました。その日は許可するのですが、翌日同じ理由では残業させません。残業をしないための再発防止策を出してもらいます。それを厳しく何度もやるものだから、二度と残業などするものかとなって、やはり残業が減ります。

 

リフレッシュ休暇は、課長以上に2週間連続休暇の取得を義務付けました。私は大学を卒業してから毎年1カ月休んでいます。夏休みに3週間、冬休みに1週間。そうすると社員も皆休むようになります。オーストラリアでは有給休暇の消化残を引き当てなければならないと聞いております。そして退職時に残っている消化残分はお金で買い取らないといけないのです。下手をすると退職金の額より多くなります。先進国はそういう流れになっています。日本は遅れているということを自覚しなければなりません。

諦めずにとにかく実行

私はいつも川があれば飛び込みなさいと言っています。実行が一番重要だということです。PDCAといいますが、多くの組織にとってAは「認める」のAになっていないでしょうか。日本の会社はすぐに計画を練ろうとしますが、計画を作らなくても、走りながら決めて先に進むことができます。決めたら部下に任せ、そこで上司が一緒に走ることが重要です。報告、連絡、相談を怠らず、正しい方向に進んでいるか常にチェックさえしておけばいいのです。そしてデッドラインを追い掛けます。仕事に正解はありません。それなりに、なるほどと思わせる所で終わらせることです。そして「さん呼び運動」。同じ会社で同じ組織で働く以上、上下関係はありません。
今日の話の中で、いいかもしれない、役に立つかもしれないというものがあったら、諦めずに最後の最後まで徹底して導入してほしいと思います。