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平成27年度 ちょっとした工夫で仕事も生活も豊かに ワーク・ライフ・バランスフェスタを開催

フェスタ終了センター主催事業 投稿日2015.11.2

開催要項

開催日・場所

平成27年11月2日・兵庫県中央労働センター

リレープレゼン(事例報告)

「会議やメールなどを見直す」&「部署を越えて助け合う」
パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
出演者
シゴトダイエット推進室室長 松田聡子氏
出演者 株式会社基陽総務部主任 南浩一氏

特別講演

テーマ ちょっとした工夫で働き方を変える
講演者

渥美由喜氏
内閣府少子化危機突破タスクフォース政策推進 前チームリーダー
内閣府少子化社会対策大綱を踏まえた結婚・子育て支援の推進に関する検討会座長代理

リレープレゼン(事例報告)
ちょっとした工夫でワーク・ライフ・バランスを実践

リレープレゼン①:職場でシゴトを常に見直す

スピーカー

パナソニック株式会社エコソリューションズ社
シゴトダイエット推進室 室長 松田聡子氏

松田氏

当部門は、パナソニックの4つのカンパニーのうちの1つで、この取り組みはパナソニック全体の活動ではなく、松下電工時代から続くエコソリューションズ社で実施している活動です。きっかけは、会社の幹部の「今のようなIT環境がなかった30年前と経営数字を比べると売り上げ、従業員は増えているが、1人当たりの売り上げ、利益は下がっている」という問題提起でした。

ホワイトカラー生産性向上を中心に

これまで熱心に改善活動に取り組んできた生産部門に対し、間接部門では取り組みが十分でありませんでした。そこで、2008年度にシゴトダイエットプロジェクトを、全社プロジェクトとしてスタートし、11年4月にはシゴトダイエット推進室を設置し、継続して風土改革活動として取り組んでいます。
活動の目指すものは、シゴトを見直して時間を創出し、創出した時間を“新しいシゴト”や“自己投資”に使うことによって、たくましい社員・会社になっていこうというものです。活動を通じて創出する時間は目安目標として一人当たり年間50時間、1日単位で10分程度となります。ダイエット活動には、①職場、②個人、③全社横断の視点のものがあり、その活動事例を社内にアピールすることで風土醸成に取り組んでいます。職場に対しては人事部門が事務局となり、各職場の部長や課長が責任者に、その部下が委員となって、浸透を図っています。

職場でのダイエット活動を中心に

私たちの活動は職場単位のダイエットがメーンです。全部署で1部署当たり必ず1件以上のダイエット活動を実施します。そのために、職場でシゴトの進め方を含めた見直しを行い、6月と12月には新しいテーマを設定し、その進捗を3カ月ごとに振り返ります。08年度当初は、会議・資料・移動・メールといった全社共通テーマを設けておりましたが、10年度からは各職場の課題に応じたテーマに取り組んでいます。例えば私のいる人事部門は、会議で発表する前に、議論して欲しいポイントやそのために何分準備をしているかを伝えてから話を始めます。意見を出す側が、議論に使ってよい時間が分かっているので、会議が延長することがほとんどありません。このように効率の良い進め方が定着することを目指しています。
個人のダイエット活動では、個人差の大きいパソコンスキルの高位平準化に向けたノウハウを提供。セミナーやWEB講座を用意し、自発的な参加を促しています。
全社横断的な取り組みでは、定時退社日の徹底や、出張時の空き時間が有効に使えるスポットオフィス「自由席」の設置を行っています。
また、これまでに取り組んだ2万5,000件のテーマから効果が高かった20項目を厳選し、全社員で実践する取り組みをしています。これは年に2回、自分のシゴトのスタイルがこの項目通りにできているかをチェックします。その結果を受けて、職場単位で弱点を強化していきます。この取り組みで、全員が日常のシゴトの中で普通に生産性の高い方法でシゴトができることを目指しています。

内部コミュニケーションが増えた

現在では、社内で「シゴトダイエットする」という言葉が使われるようになり、認知が広がりましたし、職場で仕事の進め方に関するコミュニケーションが増えました。
シゴトダイエットという名前そのままに、減量するだけではやせ細るだけです。私たちの活動の目指す姿の通り、創出した時間を新しい仕事や自己投資に使い、たくましい社員・会社になるよう、これからも取り組んでまいります。

リレープレゼン②:部署を超えて助け合う

[スピーカー]

株式会社基陽
常務取締役 山下典子氏
総務部 主任 南浩一氏

左から、山下氏、南氏

当社は金物のまち、三木市に本社を置き、安全帯、工具袋などを製造・販売しています。商品開発・改良はお客さまの声を基に行い、一部の社員だけでなく全員で色やネーミングなどを考え、試用し、より良い商品作りを行っています。2013年にはひょうごNo.1ものづくり大賞、14年にはグッドデザイン賞・金賞を受賞。15年には日本DIY商品コンテスト3位を受賞し、社員皆の栄誉となっています。
30人の社員のうち女性は19人、14年には20代の女性係長も誕生し、「ともに成長」を皆の合言葉に助け合い、成長を続けています。

「知識」「体制」「ともに成長」

助け合いの土壌が生まれたポイントは「知識」「体制」「ともに成長」です。まず「知識」。当社製品を選んでいただけるようになるための大前提が商品知識であり、そのため全社員が研修で製造現場を経験していました。今では自主的に各部署に勉強しに行く風土ができています。
「体制」については兼任体制をとっています。営業である私(南)は現在総務を兼任していますが、以前は営業と工場、営業と物流を兼任していました。各部門の仕事を把握しているので、おのずと自信と商品愛を持って営業ができます。他部署から応援を頼まれてもスムーズに入れるというメリットがあります。
「ともに成長」については、当社では適時業務状況を事前に連絡し合い計画的に他部署へ応援に入る土壌があります。応援の際は、視点を変えて見ることで新たな改善の提案につながることもあります。全社員に勉強の機会があり、現場研修、管理職研修のほか問題解決法、弱者が強者に勝つための原理原則を学ぶランチェスター戦略、仲間が思いを一つにして一つのゴールに向かっていく組織づくりを学ぶチームビルディング、自分の最終目標と会社の目標をリンクさせ自らの進むべき道を明確にする5Cなどの研修を受けています。社員が自分で見つけて行く研修も会社がバックアップしています。また、互いに「ありがとう」の言葉を掛け合うありがとうカードも浸透しています。
全社員参加の社内委員会も設置されています。3S活動を主とした「改善実行委員会」、お客さまのおもてなしを考える「お客様恋人委員会」、社員間の交流と社内活動を主とした「KHハピネス委員会」があり、委員長は20代から50代まで、部署横断的なメンバー構成としています。部署を超えて社員が互いを理解し、信頼し合えるチームワークが形成されたと実感しています。

残業が減り休みの取得が進む

これらの取り組みの結果、2つの効果が表れています。まず、残業が減りました。部署を超えて助け合い、また同じ部署でも1人でしかできない仕事をなくし、業務の効率化、スピードアップを図った結果です。
休みも取りやすくなりました。正社員の事務職で入社した女性は、結婚を期に本人から相談があり、パートになり、育児休業取得後に復帰され、活躍中です。勤続3年以上の社員が取れる営業日連続7日間のリフレッシュ休暇は、毎年100%の取得率です。16年からは、メモリアル休暇2日、ファミリー休暇3日計5日間の特別休暇が増えます。仕事ができるのは家族があってこそ、という感謝の機会になっています。
これらはワーク・ライフ・バランスを意識して懸命に取り組んできたものではなく、会社は働きやすい職場環境を整え社員は自分の得意分野で会社に貢献することにより会社と社員が共に成長することを目指してきた結果です。これからもワーク・ライフ・バランスを進め、それぞれのライフステージで活躍できるよう、互いを認め、今以上にお客さま、そして社会に必要とされる企業を目指します。

特別講演:ちょっとした工夫で 働き方を変える

渥美由喜氏

内閣府少子化危機突破タスクフォース政策推進 前チームリーダー
内閣府少子化社会対策大綱を踏まえた結婚・子育て支援の推進に関する検討会 座長代理

渥美氏

私は民間企業の中間管理職で、難病の息子の看護と父の介護のWケアの生活を送っており、「育児と介護の両方をよくできるね」と言われます。ワークライフマネジメントの必須スキルは2つあります。まず、バトンリレーをする協力者を増やすことです。そして、家事も仕事も自分でできることは徹底的に効率化することです。それによって生み出した時間を弱者に投入し、その時間は相手に合わせることです。
ではなぜ業務改善が必要なのでしょうか。これから人口が減少し、ますます仕事量は増えていくからです。そのことを見据え、今から効率的な働き方を習慣化しないといけません。

「イキイキ社員」を増やす

社員は4つの類型に分けられます。仕事重視・軽視、生活重視・軽視の4象限で分けたとき、仕事重視・生活重視の「イキイキ社員」をいかに増やすかがワークライフマネジメントでは重要です。一方で、仕事重視・生活軽視の「バリバリ社員」のうち、生活費を稼ぐための「偽装バリバリ(実質ダラダラ)」をなくし、「過労バリバリ」すなわち会社のエースを守らなければなりません。そうしないと仕事ができる人に負荷が掛かり、一番頼りにしている人がつぶれかねません。
タイムマネジメントは時間管理よりも業務管理が重要です。管理職の仕事は、メリハリのない仕事をきちんとする「怠務マネジメント」と、一部社員に業務が集中している流れをよくする「滞務マネジメント」です。多くの職場ではこの両方が同時に発生しています。
「滞務マネジメント」の対策例に、人の平準化があります。「過労バリバリ」社員の仕事を職場で洗い出し、「ヌクヌク社員」に分担させたところ、「過労バリバリ」社員の時間外労働を1年で25%減らすことができました。メンタルに赤信号がともった人だったので救われました。一方「怠務マネジメント」は、モチベーションの向上と高生産性スキルの伝達をすることで、やらされ感からの脱却を図ることがポイントになります。この2つを同時並行で進めることが大切です。

チーム力を最大にすることが目的

ワークライフマネジメントはチーム力を最大化するために必要なことです。そのためには、業務の棚卸しと業務フローの見直しをする必要があります。業務の棚卸しのうち、個人完結型業務はマニュアル化し、共同型業務については業務フロー全般を見直します。その方法の一つに、参加メンバー全員で業務を振り返り、業務をフローチャート化する方法があります。工程についてそれぞれ要した時間を太さで表し、期間を長さで示すと、繁忙期、閑散期が明確になります。前後の流れを把握することで、バトンの受け方、渡し方も分かるようになります。見える化し、共有化して、たたき台をつくると、誰もが意見を言いやすくなります。業務改善の本質は仕事の属人化を解消しつつ、チーム対応で時間コストの節減をすることだといえるでしょう。
残業削減分を全額原資に、目標の達成度合いに応じて社員にボーナスとして還元するインセンティブ制度を導入している会社があります。頑張った人が得をするやり方をしないと持続することはできません。

仕事を始める前に価値を吟味する

世界の先進的なワークライフマネジメントの取り組みを見聞きして感じる共通点は、どの会社も作業の前に、その作業にどれだけ時間をかけるのか、目的との関係でそれだけの時間をかける価値があるのかを吟味してから仕事を始めていることです。日本の会社はこれをしておらず、すぐにスタートしてしまいます。作業の後の振り返りはもっと重要で、もっと早くできないか、時間をかけすぎた原因は何かと考えることが大事です。その場合、左側に優先順位の付いた業務内容を、右側には実際のスケジュールを書き込む時間記録表を使います。時間記録表を分析すると、時間のずれは本人要因、職場要因で6、7割を占めていることが分かります。すなわち自分たちで変えられるということです。本人要因は整理整頓で仕事の迅速化につなげ、職場要因は課題を分かち合い、改善策も分かち合うことが大切です。

「やかましい」で無駄をなくす

無駄をなくすために「やかましい」の手法があります。「やめられないか」「簡単にできないか(資料の標準化、単語登録)」「まねできないか(横展開)」「(人に)してもらえないか(業務を細分化する)」「一緒にできないか(規模の利益が働く)」の頭文字を取っています。
例えば会議運営の場合、定例会議では情報共有を目的とし相談や議論はしないことを徹底する、全員立って行いタイマーを活用する、集合時間を厳守するなどが挙げられます。上司やメンバーと相談したいときは、定例会議とは別にテーマ別会議を設けます。情報共有は全員で、討議は少数精鋭で、が基本です。
時間を1分、3分、5分と決めてスピーチしてもらうやり方も有効です。CREPES話法を紹介します。Cは結論。世間で言われているようなありきたりの結論ではなく、通説に批判的なひとひねりした視点があった方がいいでしょう。Rは理由。理由と結論の関連性が明確になるよう違う角度から見たらどうか、他に理由はないかを何回も考え直してから理由を列挙します。Eは事例。誤った内容の事例だと説得力がなくなるので正確な内容であるかをチェックし、できるだけ一般的な話に拡大できるような事例を引用します。Pは要点。自説のベースになる最も重要な点をキーワードとして抽出します。Eは例外。視点を変えて、例外にも言及しておきます。Sは要約。最後に結論を要約してまとめます。

困難の中で周りを照らせる人に

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは「もし、今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを、あなたは本当にやりたいだろうか」と言いました。もし息子にそういうことがあったとしても後悔しないように、といつもその言葉を自分に突き付けています。
私の息子は1歳半で難病を発症しました。5年生存率の数値の低さに、この子をいつか看取らなければならないかもしれないと考えましたが、妻には「最後の瞬間まで笑顔で見送ろう」と言われました。私は、こんな理不尽なことが起きているのに笑顔でいられるかと妻に怒りをぶつけましたが、妻に「一番つらいのはこの子。私たちが泣いたりしたらもっとつらくなる。私たちはこの子にずっとありがとうと言い続ける。万一のことがあったらその後に思う存分泣けばいい」と言われ、励まされました。
幸せは不幸が起きないことではありません。不幸なことが起きてもそこから逃げずに、誰かに押し付けずに、協力して乗り越えること、そのプロセスにこそ幸せがあるのです。息子の入院に付き添って小児病棟に泊まっていたころ、筋ジストロフィーが急速に進行していた5歳の女児に出会いました。夜になって親が帰ってしまい泣いている子たちに、その女の子は「大丈夫だよ。お姉ちゃんが一緒にいるよ。明日の朝お母さんが来るよ」と慰め、変な顔をして笑わせようとしていました。その後女の子は天国に召されましたが、困難の中で周りを照らす人こそ、輝いている人だと思います。
それぞれのライフステージで誰もが輝けるかどうかは、周りの人に手を差し伸べる覚悟があるかないかだと思います。今後、少子化、介護ラッシュが直撃します。今から働き方を見直して、誰もが活躍する社会になってほしい。そして兵庫県が先進的な取り組みで変えていってほしいと願っています。