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岡本鉄工合資会社 ベテラン従業員が支え 皆が元気に働く会社に

岡本鉄工合資会社

所在地 神戸市兵庫区東出町2-2-3
事業内容 船舶、電力、産業機械、化工機用等鍛鋼品の製造
従業員数 43人
冊子掲載 情報誌 vol.23 2015年春
公開日 2015年4月28日

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

大型船舶のエンジン用部品などを製造して110年を迎える岡本鉄工合資会社は、高度な技能と働く意欲を持った定年退職者を積極的に再雇用しています。その上で、ベテラン従業員の業務負担を軽減し、若い従業員への技術のバトンタッチも促進。年齢に関係なく誰もがいきいきと働いています。

社長の岡本圭司さん(右)と総務部長の岡本浩明さん。

ベテランの助けで危機を乗り切る

同社は大手造船会社が本社工場を構える神戸市兵庫区で、1905年に創業。鋼材を高温で加熱し大型プレス機で鍛錬成型する鍛造技術を磨き、船舶の心臓部に当たるエンジン部品を主力製品として製造してきました。コンピューターを導入した世界初の自動鍛造システムの開発で注目を集め、また主要9カ国の船級協会認定工場となるなど、国内外の造船関連の会社から強い信頼を得ています。

ところが、バブル期には、〝3K(きつい、汚い、危険)″の職場として敬遠され、若い人材が集まらないことが原因で経営存続の危機に直面しました。そこで、人材不足を補うため、65歳で定年を迎えてもまだまだ元気な従業員に助けを求めることに。「苦しい状況でも、アウトソーシングや一時的な派遣申請は考えませんでした。自分たちが培った技術を外に出すようなことはしたくなかったのです。人手が集まるまでベテランたちが時間稼ぎをしてくれ、何とか危機を乗り越えました」と4代目社長の岡本圭司さんは振り返ります。

1995年ごろからようやく1人、2人と就職希望者が現れ始め、若手従業員の数が増えていきました。だからといって再雇用をやめたわけではありません。「職人として一人前になるには20年、甘く見ても15年はかかります。30代、40代がいない分、新人の指導に当たってもらう必要がありました」。現在も、従業員43人のうち7人が再雇用者です。

能力を評価し勤続をサポート

「営業一筋71年です。仕事に誇りと責任を持っていましたので、定年でやめる気はありませんでした。現在86歳ですが、90歳まで現役を目指します」と営業部長の忍海辺栄造さん。生き字引といわれる豊富な知識や経験を生かし、手詰まりの商談をまとめることもしばしばだといいます。現場では、78歳の今も鍛造作業を担う大森幸夫さんをはじめ、65歳以上の技能者たちが各持ち場において力を発揮しています。

再雇用者は、基本的に週5日、フルタイム勤務で、定年前と同じ部門に配属されます。一方で、1,200度を超す高温の鋼材を扱う現場担当者については、身体への負担を少なくするために、事務所での業務を増やしたり、部署を変えたり、事情に応じ勤務時間や日数を減らしたりと、無理なく長く働けるように工夫しています。「公平性を保ちながらもマニュアル化せず、一人一人の顔を見て対応しています」と岡本社長。賃金面においては、再雇用後の勤続年数に合わせた昇給制度を設けています。

自動鍛造システムを使いながらも、数ミリ単位の難しい調整は大森さん(中央)に声が掛かります。

次代への技術継承を推進

近年は、バブル期直後に入社した従業員が中堅として現場を指揮するようになり、少しずつ世代交代が進んできました。若い従業員たちは10トンを超える大物の鍛造作業や自動鍛造システムのオペレーションを担当し、複雑な構造物の加工ではベテラン従業員たちの力を借りています。総務部長の岡本浩明さんは「勘やこつといった経験に伴う数ミリ単位の調整は、若手や中堅にはまだまだ難しいです。それを容易にこなすベテランに憧れ、彼らに追い付くことをモチベーションにしている従業員も多いですね」と話します。

高度な技術を受け継ごうと自発的に教えを乞う姿が見られるようになったものの、教わったことを個人の中にとどめてしまう傾向も。そこで知識の共有の場として日々のミーティングで全体のスキルアップに努めています。

ベテラン従業員側も、日頃から世間話などでコミュニケーションを取り、困った時に相談してもらいやすい関係づくりに尽力しています。加えて、中間世代に当たる岡本社長が頻繁に現場に出向き、「おやじさんが言いたかったことはこういうことなんやで」と難しい言葉をそしゃくして若手に伝えるなど、橋渡しの役割を担っているそうです。

「うちは、孫のような若い世代の成長を皆で見守る家族的な企業です」と岡本社長。若手から勤続年数70年を超えるベテランまで、全ての従業員が納得して働き続けられるようサポートしています。

「自分に厳しく″を心掛けてきました」と忍海辺さん。部下の書類のミスにもいち早く気が付きます。
中堅が指揮を執り鍛造作業に当たる姿も。作業の詳細を日報に記録し、進行状況が一目で分かるようにしています。

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