まずは従業員満足ありきで創業から46期連続黒字を達成

※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。

　（株）スギモトは、杉本直広社長が2006（平成18）年に就任して以来、残業時間の短縮、人事制度の見直しなど矢継ぎ早に社内改革を進めてきました。その根本にあるのが「従業員満足（ES）が満たされてこそ、顧客満足（CS）が実現できる」との強い信念です。毎年の従業員満足度調査の結果などを踏まえ、一度出来上がった制度、仕組みについても常に見直しを進めています。

「ESなくしてCSなし」

スギモトは1966（昭和41）年創業の機械工具商社で、関西一円に18の営業拠点を展開。営業担当者は工場の購買担当部門をルートセールスで回って＂御用聞き＂をし、信頼関係に基づいた商売をしています。

杉本社長は社長に就任した際、あらためて商社の役割を考え抜き、「商社の商品は突き詰めれば従業員」であることに行き着きました。従業員の姿勢を見て「スギモトさんやったら仕事を任せられるな」「スギモトさんやったら、うちの息子、娘を入れたい」と取引先の企業に思ってもらえるようになるためには何ができるのかを考えていったといいます。

まず変えたのは、格好とあいさつ。それまで制服代わりだったジャンパースタイルを改め、スーツ姿で顧客の企業を訪問するようにしました。「まいど」のあいさつも、「おはようございます」に変えました。

また、「顧客満足（CS）のためにはまずは従業員満足（ES）から」と、全役職員が社長宛てに毎週3行程度で提案や報告を提出する「三行提報」の制度をスタート。そこから生まれた5S（整理、整頓、清掃、清潔、しつけ）活動では、社内だけでなく地域の清掃活動にも力を注ぎ、毎回高い参加率を誇っています。毎年、従業員満足度調査を実施し、そこでは従業員が要望を書き込めるようになっています。その中から、メンタルヘルスの窓口の設置や、40歳超の配偶者についても会社負担で健康診断を受けられる制度が設けられました。

長く働き続けてもらうために

杉本社長は就任直後、残業時間の短縮に真っ先に取り組みました。「残業が恒常化しており、働き方を変える必要がありました」と執行役員管理部長兼経営企画室長の江尻保則さんは説明します。午後8時半から7時半、7時へと段階的に完全退社時間を繰り上げていきました。並行して基幹システムを見直し、より効率的に受発注ができるシステムを導入。また、時間を要する業務を見直す中で、配送専門の従業員を新たに雇用しました。

2008（平成20）年に同社に転職してきた江尻さんは、「前に勤めていた会社では遅くまで働くのが当たり前になっており、スギモトに入社して家族が一番驚きました。人生の時間が2倍に増えたよう。家族と一緒に食事をし、読書や勉強の時間に充てています」と話します。他の従業員も英会話やジム通いなど自己啓発や健康づくりに使う時間ができたと喜んでいるそうです。「何より定時までに仕事を終えないといけないという気持ちが集中力を生み、メリハリができました。一日があっという間という従業員も多いです」

制度や施策を常に見直し進化させる

人事制度の見直しも行いました。以前は成果主義に偏った人事制度でしたが、本人の努力以外で、担当する会社の業績によって売り上げが左右されることを踏まえ、プロセスの比重も加え従業員一人ひとりがしっかり成長できるシステムを取り入れました。

現在、力を注いでいるのが、女性従業員が働きやすい職場づくりに向けた取り組みです。同社では6年前から、女性総合職の採用を始め、現在、女性従業員は16人にまで増えています。女性ならではの意見を吸い上げるため、女性従業員だけの会議を開き、そこで出された要望を施策に反映するようにしています。

こうした取り組みにより従業員満足度は上昇し、業績も創業来46期連続で黒字を達成しています。ただ、目標としている従業員の定着率は「まだ上がったと言い切れるまでにはなっていない」とのこと。作り上げた制度や導入した施策についても、「それで満足をするのではなく常に見直しを図りながら、従業員が納得のいくものに進化させていかなければ」と江尻さん。「従業員がより満足できる制度、施策作りに向け、いいと思えるものは貪欲に取り込んでいきたい」と話しています。